日記(6)

そうこうしているうちに、東京の秋葉原営業所から大阪の支社に転勤となり、今度は日本橋界隈に出入りすることとなりましたが、このころになるとマイコン雑誌も星さんのところの「I/O」から西さんたちが独立し「アスキー」を発刊したり、電波新聞社の「マイコン」が出てきたりと、毎月かなりの情報が手に入るようになりました。
モトローラー社の「スピードマスター」で、アッセンブラを使ってこちょこちょと簡単なプログラム(窓に取り付けたセンサーからの信号を受け取ってブザーを鳴らす、なんていうプログラムです。何せ大阪支社に転勤したら、営業担当地域が四国全域で出張が月の半分となり、アパートの部屋が無用心でしたから)を組んだりしていました。
そのころ雑誌の付録(なんとソノシート)についてきた「タイニーベーシック」に出会い、アッセンブラと違って、コマンド、ステートメントでプログラムが組めることにびっくり。
「タイニーベーシック」の勉強を始めました。この「タイニーベーシック」は「2Kベーシック」とも呼ばれたように、たった2KバイトしかないBASIC言語で、扱えるのは整数の+32767から-32768まで、文字列は256バイト以内、変数も256個までという本当に原始的なBASIC言語でしたが、なにせ2Kバイトしかありませんで逆アッセンブルして、どのようにしてBASIC言語がプログラムを実行するのかを知るには本当に役に立ったと思います。
現在のマイクロソフトのビジュアルベーシックなどは、大きすぎて逆アッセンブルして解析するなど正気の沙汰ではありませんが、これからコンピュータの勉強を始められる方には、この「タイニーベーシック」のような自分の力で解析できるような、簡単なコンピュータ言語があれば理解もいっそう進むのではないかと思いますが。
どなたか、「タイニーベーシック」用シミュレーターでも作られませんか。

日記(5)

1976年になると、NECから1ボードマイコンキットのTK-80が販売され、秋葉原では電気館の4Fにあるセミナー会場で頻繁に講習会が開かれるようになりました。
当時、NECはレコードプレイヤーなどのオーディオ機器なども販売していましたので、顔なじみのNECの営業マンに頼み込んで、TK-80のユーザーでもないのに講習会に参加していました。
1ボードマイコンは、プログラムやデータの入出力にはカセットレコーダーを使っていたのですが、うまく動かないケースがほとんどでユーザーの悩みの種でした。講習会に参加されていた方が、講師の方に質問をしたところ「私はソフトウェア技術者ですので、ハードのことは判りません」と立ち往生されましたので、私が講師に代わって説明をしたことがあります。
入出力用のLSIである「8255」から、1ビットは2~2.5ボルト、0ビットは1ボルトの出力があり、それを300ボー程度のアナログ信号としてカセットテープレコーダーに記録するのですが、初期のTK-80はアナログ変換の回路に欠点があり、コンデンサーを1個回路上に追加してやるとスムーズに出力、入力ができるようになるのです。
こちらはオーディオ屋ですので、その辺のアナログ回路はお手の物で、入出力回路のどの部分にコンデンサーを追加すればよいかをホワイトボードに書きながら説明したのですが、後で講師の方から「よく判っておられるようですね」とお褒めの言葉をいただきましたが、判っているのはそこらあたりだけで、肝心のプログラムとなるとさっぱりという状態でした。